なぜ秋から冬にかけて夜尿症が増えるの?
「子どものおねしょが秋から冬の季節にかけて多くなる気がする…」そんなご相談が小児科でも多く寄せられます。夜尿症は季節によって頻度が増加することが知られています。今回は秋から冬にかけて夜尿症が増える理由と治療方法について解説していきます。
夜尿症とは
夜尿症(やにょうしょう)はお子さんが夜間に無意識のうちにお漏らしをしてしまう状態を指します。5歳を過ぎても夜間の夜尿が月1回以上、3カ月以上続く場合は夜尿症と診断されます。小学生でも10%前後、10歳でも約5%のお子さんが夜尿症と診断されています。決して珍しいことではなく成長とともに自然に減るケースが多いですが、季節によって夜尿の回数が増減することがあるのも特徴です。
夜尿症は子どもにとって恥ずかしい思いをさせたり自信をなくしてしまったりすることもあります。子どもの自己肯定感や日常生活にも影響を与えることもありますので、放置せずに早めに治療することが望ましいです。また、家庭や周りの大人が適切にサポートしてあげることが大切です。いきなり叱ったり無理に治そうと焦ったりするのではなく、子どもが安心できる環境を整え、少しずつ改善することを目指しましょう。
秋から冬の季節に夜尿症が増える理由
・体温調節の影響
秋から冬は気温の低下により、体温を維持するために水分の排出が増える傾向があります。その結果、夜間の尿量が夏場より増加し膀胱が小さいお子さんにとっては、容量が限界を迎え夜尿が起きやすくなります。
・睡眠時の変化
寒い季節は厚着で布団をかぶって寝ることもあるため、寝返りや夜中の目覚めが減り深い眠りに入りやすくなります。膀胱がいっぱいになっても目覚めにくいことで夜尿が起こります。
・水分摂取や代謝の変化
寒い季節は水分の摂取量が減る一方で、体が冷えやすくなることで排尿を促す反射を誘発する傾向があります。また、秋から冬は便秘になりやすいお子さんも多く、便秘で腸に便がたまると腹部が膨らみ、膀胱を圧迫して容量が低下することがあります。
・ホルモンのリズム
夜間に尿の量を調整する「抗利尿ホルモン」の分泌も寒さの影響を受けやすいとされており、夜尿症の発症や悪化につながる場合があります。
治療方法
まずは寝る前の2~3時間は水分を控え寝る前には必ずトイレに行く習慣をつけましょう。日中は十分に水分を摂り、トイレの時間を決めることも大切です。秋から冬にかけての寒い季節には腹巻きや温かい食事、入浴により体の冷えや便秘を防ぎます。さらに規則正しい睡眠の習慣を身に付け、食事の際は塩分の摂りすぎにも注意しましょう。これらの規則正しい生活習慣を整えることがまず初めに取り組むべきことです。
次に、夜尿があったときに下着やおむつに取り付けたアラームが鳴る仕組みを利用して子どもに夜のおしっこを知らせるというアラーム療法というものがあります。この方法の良い点は、子どもが自分で排尿をコントロールできるようになることです。長い期間続けることで脳と膀胱の連携が改善し自然と夜尿症が解消していきます。ただし、効果が出るまでには時間がかかる場合もあり根気強く続けることが大切です。
それでも改善しない場合は、抗利尿ホルモン薬や抗コリン薬による治療を行います。抗利尿ホルモン薬は体内で自然に分泌される抗利尿ホルモンの働きを人工的に補う薬です。これにより、夜間に腎臓からの尿の量を減らし夜中におしっこを漏らす回数や量を減らすことができます。特に、夜尿症がホルモンの分泌不足による場合に効果的です。
これらの治療を組み合わせて子どもが自信を持って生活できるようにサポートします。
まとめ
夜尿症は多くの子どもに見られる一般的な症状ですが、正しい理解と適切な対応が大切です。放置せずに早めに適切な治療を行うことで、自然に治るよりも1年後の治癒率を約3倍高めることができます。夜尿症を克服して子どもたちが安心して夜を過ごし、楽しい生活を送れるようサポートしていきましょう。
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