子どもの手汗・ワキ汗に悩んでいませんか?小児科に相談する目安と自宅でできるケア
監修:日本小児科学会専門医 森川哲行
「お子さんの手がいつも湿っていて心配…。」「手汗の量が多くて、学校で困っているみたい。」そんな悩みを抱えている保護者の方も多いのではないでしょうか。おおたかの森こどもクリニックでは、こうした手汗・ワキ汗のご相談も承っています。実は、手汗やワキ汗が多いお子さんについて、小児科で相談しても大丈夫です。むしろ、早めに相談することで症状が和らぎ、学校生活での困りごとを減らせる可能性があります。今回は思春期のお子さんの手汗・ワキ汗について、押さえておきたいポイントをご説明します。
手汗・ワキ汗が多い。これって病気なの?
「うちの子、手がいつもジメジメしている」「着替えの頻度が多くて、洗濯が大変」「本人も気にしているのか、人前で手を出すのをためらっている」。こうした様子を見ると、不安になりますよね。しかし、手汗やワキ汗が出ること自体は体が体温を調節するための自然な反応です。汗の量が生活に支障をきたしているかどうかという点が問題になります。
思春期にかけては、緊張やストレスによって汗の量が目立つようになったり、ホルモンの影響でワキのニオイが気になり始めたりすることは珍しくありません。ただし、日常生活に大きな影響が出ている場合には、親として「何かしてあげられることがあるかな」と考えるのは当然です。そんなときは、小児科でご相談ください。
小児科で相談する目安とは?
では、実際にはどんなときに小児科へ行けばいいのでしょうか。以下のチェックリストを参考にしてください。
【受診のチェックリスト】
・手汗が多くて、ノートやプリントがにじむことがある
・ワキ汗で服がすぐに濡れて、本人が気にしている
・安静にしていても、手の湿りが繰り返しみられる
・汗のニオイが強くなり始めた(ニオイについては後述します)
・学校の授業や友人関係の中で、本人が「困っている」と訴えている
・親や兄弟姉妹にも同じような悩みがある
・生活指導や市販の制汗剤では改善しにくい
これらのうち、1つでも当てはまり、お子さんやご家族が困っていると感じたら、一度小児科でご相談ください。保護者の方の心配だけでなく、お子さんの「困った」という気持ちが受診の目安になります。
【早めの受診をおすすめするサイン】
次のような場合は、暑さや運動、緊張による通常の発汗とは別の原因が隠れていることがあるため、早めに小児科を受診してください。
・急に汗の量が増えた
・手足だけでなく全身に汗をかく
・左右で汗の量に差がある
・夜間や睡眠中にも目立つ発汗がある
・発熱、動悸、体重減少、だるさを伴う
・新しく飲み始めたお薬がある
症状が強い場合や、意識状態の変化・息苦しさ・強い動悸を伴うなど急な体調変化がある場合は、様子を見ずに速やかに医療機関を受診してください。意識がおかしい、呼吸が苦しいなど症状が強いときは、救急要請も検討してください。
また、汗のニオイが強いことは、多汗症そのものよりも「腋臭症」など別の原因が関係していることもあります。
手汗・ワキ汗の原因。実はいくつかのパターンがあります
汗をかくこと自体は体温を下げるための大切な体の機能です。子どもの汗のかき方は、年齢や体格、活動量によっても差があります。気温や運動量に見合わないほど汗が多く、日常生活に支障が出ている状態を「多汗症(たかんしょう)」といいます。暑い環境や運動時にも症状は起こりますが、運動をしていないときや涼しい部屋にいるときでも汗が出てしまうことがあるのが特徴の一つです。特に、思春期にかけては次のような原因が複雑に絡み合って、一時的に汗の量が急増しやすい時期でもあります。また、季節の変わり目や気温の変化によっても、汗の量が増えることがあります。ただし、生活に支障が出るほどの発汗が続く場合は、成長期だけの一時的なものと決めつけずに、一度ご相談ください。
・自律神経の働きの変化:体温が上がっていなくても、交感神経の働きによって発汗が過剰になることがあります。「テストで緊張する」「人前で発表する」といった場面では、症状が強まりやすくなります。
・ホルモンバランスの変化(ニオイへの影響):手足やワキの汗の「量」は、主にエクリン汗腺が担っており、原発性局所多汗症でみられる発汗は主に交感神経の働きによって調節されています。一方、思春期にホルモンの分泌が活発になると、ワキなどに多く分布するアポクリン腺の働きが活発になり、ワキ汗のニオイが目立ちやすくなります。
・体質的な要因:原発性局所多汗症は、家族内でみられる例もあり、体質が関係していると考えられています。
季節ごとに気をつけるべき「汗のトラブル」
実は子どもの手汗・ワキ汗は季節によって注意すべき症状や肌トラブルが異なります。1年を通じて快適に過ごせるよう、季節ごとのポイントを押さえておきましょう。
●春・夏:皮膚トラブルと、誤った水分制限に注意!
気温が一気に上がる春夏は、最も汗の量が増える季節です。この時期に特に注意したいのがお肌の二次トラブルです。
・手足の皮むけ・水ぶくれ:多汗に伴って、または多汗とは別の皮膚トラブル(汗疱など)として、小さな水ぶくれや皮むけがみられることがあります。繰り返す場合や、強いかゆみ・痛みを伴う場合は、水虫など他の皮膚トラブルとの鑑別が必要なこともあるため受診をご検討ください。
・あせも・かぶれ・かゆみ:ワキ汗を大量にかいて服が張り付いた状態が続くと、あせもや湿疹ができ、かゆくて勉強に集中できなくなることがあります。
・「汗をかかないように…」とするための水分制限:子どもによっては、汗をかくのを嫌がって水分補給を我慢してしまい、熱中症のリスクを高めてしまうことがあります。
●秋・冬:冷えとカサカサ乾燥に注意!
一見、汗の悩みが減るように思える秋冬ですが、実は隠れた悩みが多い季節です。
・汗冷え:外は寒くても、暖房が効いた教室や通学の早歩き、緊張によってワキ汗をかいてしまいます。汗で濡れた衣類のままでいると体が冷えやすく、寒さや不快感につながることがあります。
・乾燥とかゆみの悪化:手汗を繰り返し拭き取る際の摩擦や、頻繁な手洗いなどが重なることで、カサカサに乾燥し、ひび割れやあかぎれを起こしやすくなることがあります。
・臭いの発生:冬は厚着をするため通気性が悪くなり、ワキの汗が蒸れてニオイが服の中にこもり、ふとした瞬間に強く漂ってしまうことがあります。
多汗症チェックリスト
先ほどのチェックリストが日常生活の中で気づく身近なサインだったのに対し、こちらは、明らかな原因のない「原発性局所多汗症」を考える際に医療機関で用いられる医学的な目安です。
明らかな原因がみられないまま、局所的な過剰発汗が6か月以上続き、以下の6つの項目のうち、2つ以上当てはまる場合には、原発性局所多汗症の可能性があります。ただし、これは自己判断のための基準ではなく、実際には発汗の部位や経過、内服中のお薬、全身の症状などと合わせて医師が総合的に判断しますので、気になる場合は小児科にご相談ください。
・最初に症状が出たのが25歳以下である
・左右対称的に発汗が見られる
・睡眠中は局所の過剰な発汗がみられない
・週に1回以上多汗のエピソードがある
例)テスト用紙や鉛筆が汗で濡れる、など
・家族に多汗症の方がいる
・日常生活に支障をきたしている
例)友達と手をつなぐのを避ける、汗じみが気になって好きな服を着られない、タブレットや楽器が手の汗で滑りやすいなど
クリニックでの治療について
多汗症と診断された場合、症状や部位に応じて、保険診療の範囲で外用薬による治療を行うことがあります。当院では、ワキ汗には朝1回拭くだけのシートタイプの外用薬「ラピフォートワイプ」(9歳以上の原発性腋窩多汗症が対象)、手のひらの汗には夜寝る前に塗布し、朝に洗い流すタイプの「アポハイドローション」(12歳以上の原発性手掌多汗症が対象)などをご提案することがあります。ラピフォートワイプは学校にも持参しやすく、1日1回の使用で効果が持続するのが特徴です。アポハイドローションは、使用を続けることで1〜2週間ほどで変化を感じられるお子さんもいます。年齢や症状によってはご案内できる治療が異なりますので、詳しくは診察の際にご相談ください。
今日からできる、手汗・ワキ汗ケア
小児科への受診を考えながらも、「今すぐ何かしてあげたい」というお気持ちはよく分かります。以下のケアから、お子さんに合ったものを始めてみてください。
【手汗対策】
・学校に小さめのタオルやハンカチを複数枚持たせる
・こまめに手を拭く習慣をつける
【ワキ汗対策】
・吸汗速乾素材の下着や衣類を選ぶ
・化学繊維など肌に合わない素材は避け、本人が快適と感じる肌ざわりの素材を選ぶ
・低刺激性の汗拭きシートを持たせて、その場でケアできるようにする。しみたり赤くなったりする場合は使用を中止する
・着替えの枚数を増やし、ストレスを減らす
【におい対策】
・毎日のお風呂で丁寧に洗う(ただし強く洗いすぎない)
・汗を抑えたい場合は制汗剤、ニオイを抑えたい場合はデオドラント剤など、目的に合った製品を選ぶ。製品ごとの対象年齢や使用方法を守り、傷や湿疹のある皮膚には使わず、赤みやかゆみが出た場合は使用を中止する。
なお、多汗症は清潔にしていないために起こるものではありません。大切なのはお子さん自身が「自分でできる」工夫を見つけることです。完璧を目指さず、本人が無理なく続けられる方法を一緒に選んでください。また、汗のことを何度も指摘したり周囲に話したりすると、本人の緊張や負担が増すことがあります。本人の気持ちを尊重しながら、そっと寄り添うようにしましょう。
最後に
「手汗やワキ汗ぐらいで…」と躊躇する保護者の方もいますが、その心配はお子さんの生活の質に関わる大切なものです。学校での困りごとが減れば、気持ちも楽になります。受診では、症状の経過や日常生活への影響を伺ったうえで、お子さんに合った治療法をご提案します。親としての心配や疑問があれば、おおたかの森こどもクリニックにご相談ください。
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