アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎とは、皮膚が赤くなる、小さなブツブツができる、皮膚の皮がカサカサむける、かゆみを伴う湿疹などの皮膚症状が慢性的に良くなったり悪くなったりを繰り返す病気です。小さなお子さんは皮膚のバリア機能が大人と比べると未熟のため、体の外からの様々な刺激や乾燥などによりアレルギー性の炎症を引き起こすことが原因と言われています。
症状
アトピー性皮膚炎の症状には以下のものが代表として挙げられます。
- 皮膚が赤くなる
- 皮膚に小さなブツブツができる
- 皮膚の皮がカサカサになってむける
- かゆみを伴う湿疹ができる
かゆみを伴う症状がある場合、皮膚を掻き壊すことでさらにバリア機能が低下していき、どんどん悪循環に陥ってしまいますので、早めに治療を行うことが大切です。
アトピー性皮膚炎は次のような部位が特に症状が現れやすいと言われています。
アトピー性皮膚炎の症状が悪化する原因
アトピー性皮膚炎を悪化させる原因は、1つだけでない場合も少なくありません。次のような様々な原因が複雑に重なり合って起こることが多いため、これらの悪化要因の対策を行うことも治療を行う上で大切なことになります。
- ダニ
- カビ
- ペットの毛やフン
- 汗や皮膚の汚れ
- 入浴
- 衣類の刺激
- ⻩⾊ブドウ球菌
- ストレス など
検査・診断
アトピー性皮膚炎かどうかを判断するため、以下の流れで診察を進めていきます。
- 問診
- 皮膚の状態観察
- 血液検査(TARC(皮膚の細胞から作られる物質の量を検査するもの)、特異IgE抗体、好酸球数など)
まず、問診で症状が現れた時期や症状の程度、その他の病気の有無などを確認します。
次に、症状が出ている部位の皮膚の状態を観察します。そして、アトピー性皮膚炎の疑いがある場合は、必要に応じて血液検査を実施することがあります。
診断の基準としては以下の三つのポイントがあります。
- かゆみ
- 6ヶ月以上症状が続いていて、皮膚の症状が反復している(乳児では2ヶ月以上)
- 特徴的皮疹と分布
治療法
アトピー性皮膚炎は皮膚の痒みによって夜十分に眠れないことがよくあります。成⻑期であるお子さんが夜、しっかりと睡眠がとれないことで⾝⻑の伸びが悪くなったり、学校⽣活やクラブ活動、塾などの習い事などに支障をきたすこともあります。また、顔や目のまわりに症状がある場合は、白内障や網膜剥離などの合併症を引き起こし、視力に影響を与えることもあり、ご家族への負担だけでなく心労も大きいものです。そのため、早期に適切な治療で症状をコントロールすることが大切です。
当クリニックでは、症状を和らげるだけでなく、できるだけ薬を服用することなく日常⽣活を送ることができることをゴールとして治療を行っています。そのため、お子さんの症状や体質はもちろん、日常⽣活などを総合的に判断して、薬物治療、スキンケアなどの⽣活指導などを一緒に考えていきます。
スキンケア

スキンケアはアトピー性皮膚炎による皮膚のダメージを補正するために行います。皮膚を清潔に洗浄して、乾燥予防や皮膚保護のため保湿剤を塗ります。
皮膚のダメージが強いときには一日2回は行い、症状が軽快したら一日1回へと外用頻度を減少していきます。
体の洗い方も重要で、防腐剤や着色料、香料の入っていない石鹸を十分に泡立てて、皮膚をこすらないように手でもむように洗い、丁寧に石鹸をすすぐことが大事です。
軟膏は大人の指先の関節一つ分の長さに軟膏を、大人手のひら2枚分の範囲をお子さんの皮膚に塗ります。それより少ない外用剤の量だと十分量ではありません。
入浴後10分ほどで皮膚は乾燥し始めるので、外用剤は入浴後すぐに塗ることが大切です。
- 汗をかいたり、汚れがついたらすぐに洗いましょう
- 爪は短く切りましょう
- 衣類は吸湿性の良い、肌触りのよいものを選びましょう
- 髪の毛が額や首にかからないようにしましょう
- 赤ちゃんは、口の周りが、よだれや指しゃぶりで湿疹ができ、悪くなるので、よく口まわりをふいて、保湿剤をこまめに塗りましょう
- 1日1回は入浴し、石鹸を使って洗いましょう
- お風呂は熱いお湯であたたまりすぎないように短時間で済ませましょう
- 入浴後には保湿剤を塗りましょう
お子さんの体質や症状によっては、市販の保湿剤が合わない場合もあります。保湿剤を塗っても症状が改善されない場合や、使用を中止して一度小児科を受診しましょう。
外用薬
塗り薬は、ステロイド(副腎皮質ホルモン)を使用するのが一般的です。ステロイド外用薬は皮膚炎(アレルギー反応によって赤くなったところ)を抑える効果(抗炎症作用)がすぐれており、アトピー性皮膚炎の炎症を改善させます。
まず、赤くなっている(紅斑がある)ところにステロイド外用薬を塗り始めます。
ステロイド外用薬には5段階の強さのランクがあり、患者さんの状況に応じて上手に使い分ければ、効果的な治療が期待できます。症状が改善してきたら、徐々に弱いステロイドに切り替えていきます。
ステロイド以外にも、タクロリムスの外用があり、特に顔面、頸部の症状に有用性が認められています。ステロイド治療により改善してきたところでタクロリムスの外用に切り替えることがあります。
内服薬
アトピー性皮膚炎は強いかゆみを伴う病気で、かゆみの悪循環になり、病状が悪化することがあります。この悪循環を断ち切るために、飲み薬を用いることがあります。
ヒスタミンなどの、活性物質の作用を抑制する抗ヒスタミン薬や、抗アレルギー薬の飲み薬もかゆみに効果がありますが、かゆみを抑える力はステロイドやタクロリムスよりも強くはありません。
夜かゆくて寝られない、夜中に体をかきむしってしまう場合には、睡眠導入剤を用います。
他の飲み薬としては、漢方薬を用いることもあります。
注意点
アトピー性皮膚炎は、生活習慣と密接な関わりのある病気です。
生活習慣や生活環境を見直すことで、アトピー性皮膚炎が改善することがあります。
定期的にお風呂やシャワーに入ることにより、皮膚を清潔に保ちます。
バランスのとれた食事を心がけます。
- 皮膚への刺激が少ない衣服を着用します。
- 汗をかいたら洗い流す。
- 適温・適湿の環境を作ります。
- こまめに掃除することで部屋を清潔に保ちます。
- 爪を短く切ることで、皮膚をかくことによるダメージを小さくします。
- 規則正しい生活を送り、暴飲・暴食は避けましょう。
治療のスケジュール
皮膚のかゆみや赤くなっているところに対して治療を開始し、皮膚の炎症をいったん落ち着かせる時期(寛解導入期)には保湿剤とステロイドの外用を使用します。
多くの場合、十分な外用剤は使用し、適切な生活習慣を心がけることで改善していきます。
しかし、一見皮膚がきれいに見えても、皮膚の奥には炎症が残存しているため、ステロイド外用を完全中止すると増悪することが多いです。そのため、皮膚きれいになっても、少しずつステロイドを減量していくことが大事です(プロアクティブ療法)、ステロイドからタクロリムス外用に変更する方法もあります。