食物アレルギー

食物アレルギーとは、ある特定の食べ物を食べたり、触れたりした後に、皮膚や消化器、呼吸器の症状やアナフィラキシーなどの症状が誘発されるアレルギーの代表的な疾患です。
食物アレルギーの原因となる物質は食べ物に含まれるたんぱく質が主で、乳幼児期のお子さんでは、卵や⽜乳、⼩⻨、⼤⾖などが多く、学童期では果物や蕎⻨、⿂類、ピーナッツなどが多くなり、年齢によって、食物アレルギーの原因が変わってきます。そのため、今まで、食物アレルギーが出なかったお子さんでも⼩学校に入ってから、発症することも少なくありません。近年では、食生活の変化に伴い、食物アレルギーのお子さんが増加していると報告されています。また、食物アレルギーは、一般的に何かを食べた際にアレルギー症状が起こる病気と思われがちですが、原因となる食べ物を食べなくても、触れたりするだけで症状が誘発されることもあり、実は食物アレルギーの症状が発症しているにも関わらず、それに気づかずそのまま放置されているケースも少なくありません。

代表的な食物アレルギーの4つのタイプ

1.即時型

アレルギーの原因となる食べ物を食べた後、すぐに症状があらわれます。症状としてもっともあらわれやすいものは湿疹やじんましん、皮膚のかゆみなどの皮膚症状です。これらの他に呼吸器の症状や消化器の症状など、アレルギーといっても症状はお子さんによってバラバラで、他の疾患と勘違いしてしまうことも多いです。また、食物アレルギーの中には、アナフィラキシーを起こし、ショック状態に陥ることで命の危険を脅かすものもあります。

2.食物アレルギーからくる乳児アトピー性皮膚炎

乳児期の食物アレルギーの中で、もっとも多いのがこのタイプです。生後すぐに顔を中心に湿疹ができ、治療でもなかなか症状が改善しにくい傾向があります。乳児湿疹の全てが食物アレルギーというわけではありませんが、市販の保湿剤を塗っていても、なかなか症状が治まらない場合は原因が別にある可能性もありますので、一度、検査をお受けすることをおすすめします。

3.新生児・乳児消化管アレルギー

新生児の時に、卵⻩や⽜乳、ミルクが原因でまれに発症するタイプです。症状は接種後2 時間後以降に出現する下痢・おう吐・⾎便などの激しい消化器症状が主ですが、成⻑とともに症状が軽快することも多いのがこのタイプです。

4.特殊型

上記の1〜3以外に特殊型というタイプもあります。

食物アレルギーの原因となる食べ物

0 歳〜2 歳では、卵や⽜乳・⼩⻨の3つが⼤半を占めます。3歳以上になると⿂卵、蕎⻨が原因で食物アレルギーを発症するお子さんが増えてきます。これら以外にもピーナツ、果物類、⿂卵、甲殻類、ナッツ類、そば、⿂介類など、お子さんによって原因の食べ物は異なります。

食物アレルギーの原因となる食べ物

新規発祥の原因食物

0歳
(884)
1歳
(317)
2、3歳
(173)
4~6歳
(109)
7~19歳
(123)
≧20歳
(100)
1 鶏卵
57.6%
鶏卵
39.1%
魚卵
20.2%
果物
16.5%
甲殻類
17.1%
小麦
38.0%
2 牛乳 魚卵 鶏卵 鶏卵 果物 魚類
3 小麦
12.7%
牛乳
10.1%
ピーナッツ
11.6%
ピーナッツ
11.0%
鶏卵
小麦
9.8%
甲殻類
10.0%
4 - ピーナッツ
7.9%
ナッツ類
11.0%
ソバ
魚類
9.2%
果物
7.0%
5 - 果物
6.0%
果物
8.7%
ソバ
8.9%
-

症状

食物アレルギーの症状は皮膚や、呼吸器、消化器などお子さんによってさまざまです。

これらのうち、最も多いのは皮膚症状です。ただし、これらの症状は、1つだけがあらわれる場合もあれば、急に複数の症状があらわれることもあります。

口周囲だけにポツポツ出てくるのは食物が皮膚に触れたことで起こる接触性皮膚炎のことが多く、食物アレルギーではないことが多いです。その場合、食事前後に口周囲へたっぷりワセリンをつけることをお勧めします。

検査と診断

問診によるアレルギー食材の推定が最も重要です。⾎液検査では⾎液中のアレルゲンIgE 抗体の測定を行いますが、これらの結果が陽性でも、必ずしも症状の原因とは断定できないため、問診の結果を最重視して⾎液検査の結果と合わせて総合的に診断します。
症状の原因になる食べ物の特定には、食物除去試験や負荷試験を行います。負荷試験は、症状を誘発する危険があるため、食物の負荷を少量より開始し、徐々に増やして反応をみます。

治療

原因となる食べ物を食べなければアレルギー症状が出現することはありませんが、負荷試験で少量食べられた場合は、ご家庭で『少量で食べることができたら増やさず継続していく』ことが⼤事です。現在のアレルギー治療の基本方針は『必要最⼩限の除去』が推奨されています。また、卵、乳、ピーナッツに関しては離乳食早期から接種することで、各々の食物アレルギーの発症率を低下させることがわかっています。しかし、湿疹がある乳児は食物アレルギー出現する可能性が高いのでまず皮疹を外用薬で安定させてから加熱した少ない量の卵を開始する必要があります。
症状が出た際には、対症療法として抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を内服し、湿疹が強い場合にはステロイド外用薬を塗ります。

注意点

食物アレルギーが疑われたら、まず原因と思われる食べ物を食事から除去します。
低アレルギーミルクや低アレルギー米など、市販されている低アレルギー食品を代替食品として利用するのも有効です。
⼩児の場合、1〜2年除去していれば⾃然に食べられるようになることが多いので、負荷試験を行って、食べても⼤丈夫かどうか確認後に除去や制限を解除します。